TVドラマや漫画の追憶
TBSドラマ「JIN-仁-」最終回の感想。いやぁ〜面白かったぁ♪ひさびさに全編を録画して観たテレビドラマでした♪
前々記事「ツァラトゥストラはかく語りき...はレインボーマンではないか!?」と
前記事「パラレルワールドを教えてくれたのは、スーパージェッターだった!」は
TBSドラマ編「JIN-仁-」最終回の感想を書くための前説だったりします^^; 前説を2記事に分けても、本記事ドラマ「JIN-仁-」最終回の感想は、かなりの長文になると思います(苦笑)
さて「JIN-仁-」の原作(漫画)もTVドラマもご存知ない方にとって「JIN-仁-」とは?
「現代の医師が、もし幕末にタイムスリップしたらどうなるか?」を描いたSF的医療漫画(ドラマ)です。
東都大学付属病院の脳外科医・南方仁(みなみかた じん)は、ある夜急患で運ばれた男性の脳から胎児の形をした奇形腫を摘出する。その後、仁は激しい頭痛と幻聴に悩まされる。仁には現代で自分の執刀した脳腫瘍の手術が原因で植物人間状態となってしまった婚約者、友永未来(ともなが みき)が居ました。江戸にタイムスリップした仁は吉原(遊郭)で、未来にうりふたつの花魁:野風に出会います。
仁は集中治療室から脱走した患者を止めようとしたが、揉み合いの中でバランスを崩し階段から落ちてそのまま気絶してしまう。意識を取り戻した仁がふと辺りを見渡すと、侍達が斬り合いをしていた。
仁は文久2年(1862年)、幕末の江戸時代にタイムスリップをしていたのだった。 そこで仁は人々を救う為、現代の知識と幕末の人々の協力により、近代医療を実現していく。江戸の人々からみれば、仁の処置はまるで神のごとく奇跡の連続であり、同時に博愛主義は多くの人々に感動を与える。
しかし、仁は『本来亡くなってしまう運命にあるはずの人間を助けることは、自分が歴史を変えてしまうことになるのではないか?』『自分が助けた患者が、結局亡くなってしまう虚無の繰り返しは、神は歴史を変えてしまうことを許さないからではないか?』
仁がどうあがいても神による「歴史の修正力」によってすべては無と化してしまうのではないだろうか?と苦悩するのであった。
野風は再発性の乳がんを患いながらも、フランス人男性の間に授かった子供を産みたいと仁に懇願します。野風と子供を救うことに仁は全力を傾けます。そんな仁を傍らでいつも支えていたのが、旗本の娘:橘咲(たちばな さき)です。
仁も咲も相思相愛でしたが、咲は未来(みき)や野風に対する仁の想いを知り、自分だけが幸せになることは許されない。仁もまた、現代に残した未来への想いと、いつ現代に引き戻されるかわからないこの身は、咲を不幸にするだけと葛藤します。
ドラマ「JIN-仁-」は、SFチックな医療ドラマではあるのですが、この仁と咲の恋愛の結末はどうなるのだろうか?とつねにハラハラドキドキさせられ続けました(笑)
ドラマの最終話が近づき、咲は上野の彰義隊と官軍の戦いの流れ弾を受け、倒れた際の擦過傷から緑膿菌に感染します。緑膿菌は代表的な常在菌で、健常者が感染することはほとんどありませんが、野戦病院での看護に無理がたたり、免疫力の低下した咲は重度の緑膿菌感染症に陥ります。あるいは、咲の緑膿菌感染は野戦病院内の院内感染という設定だったのかも知れません。
緑膿菌は薬剤抵抗性の強い菌で、仁や咲らが作ったペニシリンは効かず、現代にあるホスミシン(ホスホマイシン カルシウム)が有効剤です。その時、仁はタイムスリップの原因を作った救急患者がホスミシンを奪って逃げようとしてことを思い出し、あの時の急患が江戸時代からタイムスリップして戻ってきた、自分自身であったことに気がつきます。そして、仁は咲を救うべく、再度現代に戻ってホスミシンを手に入れるために自ら崖下に転落していきます。
ニーチェは「ツァラトゥストラはかく語りき」で「永劫回帰」を説いています。永劫回帰とは..
もし、人生をやり直そうとしても、それは喜び・悲しみ・苦痛も全く同じように繰り返すだけの虚無しか与えられない。それは星(=宇宙)が狂いなく円環運動を延々と繰り返していると同じように。
果たして、ドラマ「JIN-仁-」主人公、南方仁の苦悩はまさに「永劫回帰」でした。
『助けた患者が、結局亡くなってしまうのは神による歴史の修正力ではないだろうか?』
『この絶望(虚無)の繰り返しに、いったい何の意味があると言うのだ?』
現代に戻ったところで結局、咲は救えないかもしれない。
でも「たとえ、この身がどうなろうと、今自分は行くのだ!」
と仁は瀕死の身体で、這いつくばりながら崖から転落していきます。
ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」の最後は
人生をやり直そうとしても、それはただ虚無の再生でしかない。
しかし、ツァラトゥストラはそれを承知の上で
「これが人生であったのか、よし、それならばもう一度!」
と叫び、虚無を超克せんと決意するところで終わっています。
「神は乗り越えられる試練しか与えない」→(JIN-仁-)
「人間とは乗り越えられるべきものである」→(ニーチェ)
ドラマ「JIN-仁-」の南方仁は、ツァラトゥストラだった!
しかしドラマ「JIN-仁-」の最終回の最後の最後はさらに、感動のラストシーンでした。
「主人公の脳内の腫瘍としての小さな胎児」→(JIN-仁-)
「宇宙に浮かぶボーマン船長の大きな胎児」→(2001年宇宙の旅)
胎児は連綿と続く生命の象徴、脳内も宇宙と同様に果てしなく広大で深淵な神秘の世界。
「神と人間・生命と時空」というテーマは両作品に共通するモチーフであったと思います。
第二期完結編の最終話を終えて、ドラマ編「JIN-仁-」について様々なレビューや感想を読むと、原作を超えた最終話であったと書いてあり、視聴率も相当高かったようです。そして要所々で登場する、仁の脳内から胎児様の腫瘍は重要なモチーフでした。
【細かい話ですが、胎児は医学資料館など特別な場合を除いて病院でホルマリン漬けにするようなことはありません、ドラマで出てきたのはあくまで胎児様(型)腫瘍です】
原作とTVドラマ編でもっとも異なるのは、仁の婚約者であり、仁の執刀した脳腫瘍の手術が原因で植物人間状態となってしまった友永未来(ともなが みき)の存在です。
原作(漫画)では...
現代の南方仁に恋人は居たがタイムスリップ前にプロポーズを断られ、未来(みき)は物語にはほとんど関係していない。なので原作では、南方仁は橘咲(たちばな さき)と江戸時代で結婚し橘仁となり、夫婦で仁友堂病院を創設する。ドラマ編では...
そして現代に戻った南方仁は、坂本龍馬の魂と伴に国境なき医師団に活躍の場を求め、やがてフランスからやってきた野風の子孫と再会をする。
タイムスリップで戻った仁を、現代の仁が手術をするが、江戸に居たはずの仁は、歴史から消されていた。しかし唯一、橘咲だけは仁のことを記憶に留めておりラブレターを書き残す。咲は一生独身を通し、野風の遺児(安寿)を養子として迎える。仁は橘未来から橘咲が書き残した、150年越しのラブレターを受け取り感涙する。
そして、現代では友永未来の存在も消されていて、代わりに友永未来に瓜二つの、安寿の子孫が橘未来(たちばな みき)として南方仁と再会する。
その橘未来が急患として運ばれ、脳腫瘍があることをあることが判明する。
仁は叫ぶ「私にオペをやらせてください!...(もう一度!)」
そして、仁が橘未来の脳腫瘍の手術を始めるシーンで...THE END。
「これが人生であったのか、よし、それならばもう一度!」...ツァラトゥストラ
まさにドラマ「JIN-仁-」の南方仁は、ツァラトゥストラだった!
ほんとに、ほんとに、素晴らしい脚本&演出でした!!
原作:村上もとか氏をはじめ
監督:平川雄一朗、山室大輔、川嶋龍太郎、那須田淳
制作:石丸彰彦、津留正明氏らに、大拍手です。
原作では、江戸時代の仁と、現代の仁の、二人が存在してしまうことになるのですが、ドラマ編では江戸時代の仁は歴史から消されていて、同時に友永未来(ともなが みき)も現代の歴史から消されている。この矛盾をドラマ編では、パラレルワールド(今居る自分の世界と並行して、ほとんど同じようで、少しだけちがう別世界がある)という設定で説明しています。
あれ?私が飛行機の中で教えてもらったパラレルワールドとちょっと違いますが^^;
でも、このパラレルワールドをドラマの最終話で説明することにより「タイムパラドックスの矛盾」や「永劫回帰からの脱却」を解決させています。
ドラマ「JIN-仁-」の中でもう一人の主役は坂本龍馬でした。
仁の脳内に出来た胎児型腫瘍は、仁が坂本龍馬を治療する際に大量の血浴びたことが原因で、龍馬が死んだ後、仁は脳内に宿った腫瘍(坂本龍馬)から度々話かけられますが、現代に戻り仁の腫瘍摘出後は坂本龍馬は仁から去って行きます。
女好きで、無鉄砲で、大風呂敷で、底抜けに明るい坂本龍馬は、ややこしい哲学書「ツァラトゥストラはかく語りき」(ニーチェ作品)には似つかわしくない人物ですが、坂本龍馬の役割とは一体?
ドラマ「JIN-仁-」でもう一つのテーマは、幕末の日本に渦巻く巨大なルサンチマンです。
ルサンチマンを一義的に解釈すると誤解が生じますが、尊王攘夷派(討幕派)と佐幕派、または同じ藩内での上級武士と下級武士の確執など、恨みや怨念が渦巻く幕末の日本で、それらを融解していったのが抜群の行動力で薩長同盟を実現させた坂本龍馬の活躍でした。そして永劫回帰の呪縛にとらわれ、ネガティブモードになりかけた仁を、つねに勇気づけていたのも龍馬でした。
「憎しみからは、な〜んちゃ生まれんぜよ!」の龍馬の言葉が全てを言い表していますよね...って。これは「龍馬伝」の中のセリフでしたっけ??まぁ私の記憶もパラレルワールドの中です(^^;)
ともあれ、坂本龍馬の魅力は、理屈をこねる前に、先ずは行動せよ!「それならばもう一度!」どころでなく「ならば何百回でも何千回でもやるぜよ!」というバイタリティーだったんですね。
龍馬を演じた俳優:内野聖陽さんは恐縮ながら「JIN-仁-」を観るまで存じ上げませんでしたが、今までの、どの坂本龍馬よりも、龍馬らしい龍馬を演じた俳優さんだと思いました。...って。
この記事を書くのにWikでプロフィールを確認したら、実生活でも龍馬と同じような...(笑)
余談ついでに追記を3つ
(1)原作:村上もとか氏が[JIN-仁-]を描くきっかけは、遊郭を調べているうちに身よりもなく売られて来た遊女たちが、梅毒に感染し次々に死んでいった事実を知り、せめて漫画の中で遊女たちを救いたいとの思いだったと、Wikで知りました...
ニーチェは極度の片頭痛に苦しみ、幻聴・幻覚に悩まされ、ついには発狂してしまうのですが、頭痛の原因は梅毒が脳神経を冒したとも、脳腫瘍があったとも、伝えられています。
私がドラマ[JIN-仁-]を見ていて、ニーチェ(ツァラトゥストラはかく語りき)を意識し出したのは、実は、仁が激しい頭痛とともに幻聴を聞くシーンからでした。
(2)[2001年宇宙の旅]の冒頭で、類人猿が朝日の差し込む洞窟から起き出して、モノリス(進化の鍵)を見つけますが、[ツァラトゥストラはかく語りき]の最後の場面も、ツァラトゥストラは洞窟に差し込む光に目覚め、洞窟の外に出で昇る太陽に向かって決意を語ります。
そして、[JIN-仁-]では、橘咲が名前も思い出せない最愛の人に「この世で一番美しい夕日を頂きました」と語っています。
まぁ、朝陽や夕陽はどんな映画でもモチーフになるので、これはこじつけと言えばこじつけですが^^;
(3)最後にドラマ「JIN-仁-」主題歌の「いとしき日々よ」の歌詞にまつわる話。たぶんこれはこじつけではなく、平井堅・松尾潔両氏がドラマへの思いを込めて作った歌詞なのでしょう。
数ある「JIN-仁-」最終回の感想ブログ中で、◆◇黒衣の貴婦人の徒然日記◇◆さんが書かれていました。こちらのブログの方が、拙ブログな支離滅裂な内容じゃなくて^^; とても上手に素直に「JIN-仁-」最終回の感想を綴っていらっしゃいますので、ドラマ「JIN-仁-」最終回を見逃してしまって、最終回のあらすじを知りたい方は、黒衣の貴婦人さんのブログがおすすめです^^
あなたに吹く風よ .....(野風)
あなたに咲く花よ .....(咲)
あなたと追いかけた明日よ.....(龍馬)
たとえ時がうつろうと 縫いあわせた絆は決してほどけない
あなたの手を 強く握ることも あなたを抱きしめることも
許されない運命(さだめ)だと知ってても
その笑顔に その涙に そのひたむきな想いに触れたかった
あなたに会いたくて もう一度会いたくて 届くまで叫びつづける
忘れはしない この体が消えても あなたに吹く風よ あなたに咲く花よ
あなたと追いかけた明日よ また会いたくて
今も胸に残るよ 世界で一番美しい夕陽が
ああ その瞳には 不安より大きな希望が輝いてた
ほんとに、ほんとに、いいドラマでしたねぇ♪
長文お付き合い頂き、ありがとうございましたm(_ _)m
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実はなにを隠そう、僕は村上もとかの大ファンなんです。
若かりし頃、彼の著作を求め単行本を買いあさったのを思い出します。
六三四の劍、赤いペガサス、ぅっ、他が思い出せない……
彼の作品は必ず主人公がなんらかの苦悩や凄い運命を持っています。
いいです〜ね!
最近漫画から遠のいてますので、久しぶりに買おうかな!?
台所には大量の食器達が、洗われる事を待っている。
風呂場もまた、掃除の機会をうかがっている。
しかし、時間が無いのだ。どちらも片付けてから出かけたい。
帰ってからでは、中盤に打たれた2五金(成り)が睨みを利かせている。(意味不明)
ボクが時間の無い事を嘆いていると嫁様が言う。
「神は乗り越えられる試練しか与えない」と。
ってか、嫁様・・・・。アンタがどっちかをヤッツケロよ!
嫁様が冷たく言い放つ。
「ダメよ。アタシ録画した『仁』の最終回を見てんだから」
えっ?!そこに「仁」??
あ〜。パラレル・ワールド・・・・・。
私も六三四の剣は大好きで全巻読みました♪
サラリーマン時代はBCオリジナルを購入して「龍-RON-」を楽しみにしていました♪
>しゃあさん
節電のため、電気(灯り)を消して、家族と会話しましょう...
そして、、もし、、何者かが、しゃあさんの足を踏んだら...
電気をつけてみてください、そこには、きっと別の家族がいます。
...それがパラレル・ワールドの入口です...
というのを記事にしておきましたよ(笑)
このたびは当ブログの感想をご紹介いただきありがとうございました。
書き足らない感想ばかりが浮かぶこのドラマでしたので、実はあの2部構成でもまだ満足できないんですが、何せ文字制限という壁が・・・。
でも、それ位原作に負けないパワーと脚本で、役者さんたちの役にかける情熱も素晴らしいドラマでした。
ラストの咲さんの手紙を読むシーンも、あれは本番まで大沢さんは真っ白な台本で、初見でのあの涙の芝居だったという話を聞いたりすると、余計に感動も倍層しそうです。
また是非こんな熱のある作品を見せてもらいたいものですね。
このたびは本当にありがとうございました。
それでは失礼いたします。
わざわざご丁寧に恐れ入りますm(_ _)m
それしても、なぎさ美緒さんの感想記事シリーズは圧巻ですね、驚愕しました。
タイムリープ???ってどういう意味なんだろう???
と不思議に思って読み進めたらゲームの名前だったんですね。
もうそれこそ私にとって異次元の世界でした^^;