TVドラマや漫画の追憶
なんでそーなるのっ♪このセリフを欽ちゃん(萩本欽一)独特の抑揚をつけて言える人は「コント55号のなんでそうなるの?」を知っている世代だろう。
この番組は、毎週金曜19:30から日本テレビにて放送されていた。
収録会場はコント55号誕生の地、浅草六区の松竹演芸場。
1976年3月に番組は終了し、その後
「欽ちゃんのドンとやってみよう!」(フジテレビ)
「欽ちゃんのどこまでやるの!?」(テレビ朝日)
「欽ちゃんの週刊欽曜日」(TBS)
などで欽ちゃんはピンで活躍するようになり、二郎さんは俳優へと転身した。
さて、念願のTV初出演?を中学生の時に果たした私だったが、その2年後わが母校にTV取材クルーがやってきた。そのTV取材の収録後、実際に放送された番組内容をみて
「なんでそーなるのっ!?」と絶句してしまった。
そのTV取材の収録とは・・・・荒れる中学、校内暴力とかの特集ではない。
その真逆で、教師と生徒が一丸となった素晴らしい実践教育!となる筈だった。
私の母校では、当時まだ男子は丸刈りであり、なにより掃除に対しては大変徹底していた。教室・廊下は当然のこと、トイレやタタキでも真冬であろうが全員裸足で掃除をしていた。
しかも、雑巾がけは必ず両膝をつき、イッチニ、イッチニ、と掛け声をかけて磨いていたのである
私の中学校では、生徒は登校後すぐに白いトレパン(トレーニングパンツ)に履き替え、下校時にまた制服に着替えるのだが、生徒全員のトレパンの膝は汚れていた。
この掛け声清掃は、私のクラスから発生し、以後清掃の時間は学校中でこの掛け声がこだましたのである。校長先生もすべての先生も、生徒と一緒になり掃除をしたし、私達は管理されているという意識はなく、とにかく他のクラスに負けないようにと、声を張り上げて競って廊下のきれいさを競いあった。
実はこのTV収録の時、私は卒業生の1人として、たまたま取材の様子そばで見ていた。
収録中インタビュアーが清掃中の在校生に声をかけ
「寒くない?裸足で」
「はい、もう慣れましたし、先生も一緒ですから」
とニコニコ答えていた。
インタビューアーや取材クルーの人は、くちぐちに
「いやぁ、素晴らしい実践教育ですねぇ」
「生徒さんがみんな生き生きしてますねぇ」等と絶賛してくれて
「大変、いい映像が撮れました。是非放送日を楽しみにしていて下さい」
と言って取材クルーは引き揚げていった。私はそんな風にTV局の人に言われたことに大変母校を誇らしく思い放送日を楽しみにしていた。
しかし、いざ放送を見て私は「なんでそうなるの?」と驚愕してしまった。
番組のタイトルは「ここまでやるか、徹底的な管理教育!」にすりかわっていたのである。
番組内で生徒の掃除の様子を見ていた、いわゆる評論家のコメンテーターたちは
「掃除の時に、マスクさせるならわかるけど
あんなに床に這いつくばって声を出させるなんて、全く衛生観念がなってない。」
「イッチニ、イッチニ、などと掛け声かけさせるなんてまるで軍事教練と変わらないですねぇ」
と散々に酷評していた。
確かに、そういう見方もあるだろう。
しかし私にとってショックだったのは、放送前の取材・企画説明と実際の放送内容とが180度違っていたことだ。テレビの影響力と情報の一方通行の怖さを知ったのである。
いわゆる報道番組では、キャスターの言い方や、論評者の立場によって事件の印象が全く変わってしまう。
母校の取材へは、最初から管理教育批判であったのか?それとも途中から企画変更になったのか?
母校を酷評したコメンテーターは誰一人、現場(母校)には来ていないで、好き勝手に言うだけだ。
のちに、知人のジャーナリストが言っていたが..
世相は美徳に対しては胡散臭さを感じ、批判に対しては正義を感じるものだ。...と。
なんにせよ、この出来事以降、私はテレビ(マスメディア)の情報を鵜呑みにすることはしなくなった。
2006年5月14日 筆
この記事を書いて6年経ったが・・・偏向報道とサブタイトルをつけて補足する。
私の母校(流山南部中学)で裸足で掛け声清掃する様子が、まるで軍国主義復活教育であるかのように報道された。裸足清掃は校長先生自らの実践ではじまった事なのだが、掛け声清掃自体は我がクラスから始まったことなので、詳細に記録しておこう。
私達が入学した時、流山南部中学は旧校舎を解体&新校舎建設することが決まっていた。
老朽化して隙間風が入り放題の校庭側の窓からは、容赦なく砂埃が教室内に入り込む。
「どうせ壊してしまう校舎だし・・・」かくして、旧校舎の教室で掛け声清掃が始まり、クラスごとの担当廊下は、糠袋で磨き競争がはじまり、鏡のように光る廊下に変わって行った。
と形式的な掃除しかしない生徒たちに、校長先生から「喝」が入った。
「卒業記念などと、学び舎に落書きを残していくような輩は恥を知りなさい。」
「旧校舎に感謝し、教室・廊下もピカピカにして最期を飾らせてあげましょう。」
「生徒全員、米糠を入れた糠袋を用意してそれで教室や廊下を磨きましょう。」
...ところが、どのクラスでも掃除に真剣に向き合わない生徒がいるもので(苦笑)
「先生!○○君や男子たちはおしゃべりばかりで、掃除してません!」
「おい!○○!今日からお前の号令でみんなの掃除をリードするように」
「えっ!?号令ってなんですか?」
「1,2。イッチ、ニ。って号令かけるんだよ」
後年、帰国子女の友人との会話で
「なんで生徒が掃除するの?清掃員がいないの?」
「それが日本スタイルで、きれい好きで製品製造の秀逸さの根本だ。」
なんだか極めて精神論的な話だが、ビジネスマネジメントで
【整理整頓や掃除も行き届かない職場では、ろくな仕事が出来ない】
に置き換えると納得が行く話かもしれない。
当時、全校集会時にクラス毎に廊下に整列集合した後、歌やハミングで講堂まで行くようにもなり、私語の多いダラダラした集合は無くなった。今でも母校で掛け声清掃や歌声集合があるのかは知らないが、これが裸足清掃や掛け声清掃のきっかけであり、特に国旗【日の丸】や国歌【君が代】に関して愛国啓蒙など教わった記憶はない。
この一部をメディアが切り取り、行き過ぎた管理教育&軍事教育の復活と報道された訳である。
むしろ当時、国旗【日の丸】や国歌【君が代】の啓蒙が盛んだったのは流山北部中学だ。
毎朝・毎夕での国旗掲揚・降納時に、国歌が校内放送され、【君が代】が流れている間、生徒は国旗の方角に無言で直立不動の姿勢をとるように指導されていた。母校ではないので、いつからはじまり、いつ終わったのか知らないし、特別な愛国啓蒙の為であったかどうかも知らないが、同い年で流山北部中学出身の女性ジャーナリストの江川紹子氏だ。
なぜ突如、江川紹子氏の名前が出てきたのか?次記事に続きます。
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